今日も暑かった。
夕方から夕立があって、突然の凄い雨に
干していた洗濯物がびしょびしょになった。
もう一回やり直したわ。ぷんぷん。夜の間に乾いてくれるかな。
実家からトマトを送ってもらった。
トマトは野菜スープにも使うし、すりおろしてジュースにもする。
このすりおろしプレート、これまで買って失敗してきた
数々のキッチン用品の中では、数少ない当たり。
これでトマトを皮ごとゴシゴシとすりおろして、トマトジュースにする。
皮は残ってしまうけど、手軽だし夏の間はほぼ毎日トマトジュース飲んでる。
今日も暑くて家に閉じこもっていた。
昨日の怪談の続きです。怖くないけど。
***
小学校の5年生くらいの頃かな、学校で「キューピッドさん」が流行った。
可愛い名前だけど、つまり「こっくりさん」ですね。
こっくりさんと言うと、なんだか怖い感じがするので名前を変えただけで
やり方もルールもこっくりさんとほぼ同じ。
いろいろ制約があって、例えば途中で10円玉から絶対に手を放してはいけないとか
帰っていただくときは、どこそこからお帰りください、と言わないといけないとか。
でもやっているのが子供、しかも時間制限のある休み時間ということで
みんなそんなルールは適当にしか守っていなかったけど
それでなにかあったということも、よく聞く集団ヒステリーのようなことも
まーったくありませんでした。子供だって本気で信じてやっていた訳でもないし
学校でも、父兄の間でも問題にはなっていなかった。
ところがある日の学級会の時、担任の先生が
「ああいうものはやらない方がいい」とおっしゃった。
その先生は50代の女の先生で、いつも明るくて元気でおもしろい先生が
日頃とは違うとても真剣な様子で「軽々しくやらないように」とおっしゃったので
今でもよく覚えているの。
***
当時50代だった先生が幼い頃の話なので、戦前の出来事。
先生の御実家は商家。
商家ではお稲荷さんをお祀りしていることが多いけど
先生の御実家も庭に祠を建てて
お父さんが毎朝それは熱心に手を合わせていた。
ある朝、いつものように庭の祠にお詣りに行ったお父さんが
血相を変えて家の中に飛び込んできた。
「お稲荷さんがいらっしゃらない!」
家の人はお父さんが一体何を言っているのか分からなくて
ちょっと落ち着いて。お稲荷さんがいらっしゃらないってどういうこと?
と訊ねても、お父さんは「いらっしゃらない、どこかに行ってしまわれた!」
と繰り返しては、これはえらいことになった、えらいことになった
と頭を抱えるばかり。
祠になにかあったのだろうかと、家族みんなで確かめに行ったけど
庭も祠もいつも通り、荒された様子はまったくない。
それでもお父さんが、ここにいらっしゃらないのだと言うので
お父さんがおっしゃるなら、そうなんだろうということになった。
お父さんはあちこちに相談に行かれたようで
近所の稲荷神社も尋ねられたけど、お稲荷さんを探す術はなく
毎朝、祠に手を合わせに行っては「まだお戻りになっていない」
と肩を落とすだけだった。
お稲荷さんがいなくなったという日からひと月ほど経った或る夜のこと
先生は両親の話し声で目が覚めた。
お勝手に行ってみると、お父さんが出かけるところだった。
こんな夜遅くにどこに行くのと訊ねると
お父さんはこれからお稲荷さんを迎えにいくのだ、と。
お稲荷さんが見つかったの?どこにいらっしゃるの?と聞いても
もう遅いからお前は寝ていなさい、と言うと
お父さんはお母さんに見送られて、提灯を持ってひとりで勝手口を出ていかれた。
翌朝目が覚めると、お父さんはすでに家に帰ってきていて
にこにこと上機嫌。お母さんや家族も、よかった、よかった、と話している。
お父さんは先生の顔を見ると、お稲荷さんが無事帰ってこられたぞ
と夕べの出来事を話してくれた。
昨夜、お父さんの夢枕にお稲荷さんが立たれた。
自分は今、○○村の何某という家にいる。
帰れないので、すぐに迎えにこい。
お父さんは飛び起きた。お稲荷さんを迎えに行かなくては。
○○村は、峠の向こうの村。
お母さんはこんな夜中に山を越えるなんて、と反対したけど
お稲荷さんが呼んでいらっしゃるのだから、すぐに行かなければならない。
お父さんは峠を越え、○○村に着いた。
村の駐在所で何某の家の場所を訊ねると
確かにその家はあった。
家に行って夜中に突然訪ねたことを詫び、
自分は山の向こうに住む何々というもので
実はうちのお稲荷さんが夢枕に立たれて・・・と事情を説明すると
最初は不審がっていた様子の家人が、はっとした表情で
どうぞお入りくださいと家に入れてくれた。
通された部屋には10歳くらいの男の子が寝かされていた。
寝ていたかと思うと、突然うーっと獣のような声を上げて起き上がろうとする。
慌てて家人が抑えると、それを振り払おうと、
手足をばたばたさせて暴れ
白目をむいてうーっ、うーっと唸り声をあげている。
この子はひと月ほど前から突然このような様子になったという。
医者に見せても原因が分からず、友達の話では
こっくりさんをやっていて、途中で止めてしまったとのこと
それならばと拝み屋に見せても元に戻らず
ほとほと困り果てている、と。
そこでお父さんはその子の枕元に座り
「お稲荷さん、お迎えにあがりました。一緒に帰りましょう」
と声をかけると、唸り声をあげていた子供が急におとなしくなった。
お父さんはお稲荷さんを背中におぶって
またひとりで、峠を越えられた。
***
「こういうことをすると、何を呼び出すかわからないんです。
よその家の神さんか、もっと悪いものかもしれません。
簡単に帰ってもらえないこともあるんです。
だから、軽々しくやってはいけません!」
と、先生は強い調子でおっしゃった。
この話を聞いて、まず思ったのが
お稲荷さんて見えるの?どんなお姿なの?ということ。
お父さんにはお稲荷さんが見えていたんだよね。
家族の中でお父さんただひとりだけ。
お父さんはなぜ神さんの姿が見えたのかな。
お父さんとお稲荷さんの間にどのようなつながりや約束事があったんだろう。
なぜお父さんはひとりで向かわれたのだろう。
やっぱり、神さんのお姿は見てはいけないんだろうか。
お稲荷さんは偉い神さんなのに、なぜ自分では帰ってこれなかったんだろう。
てか、それ本当においなりさ・・・いやいやいやいや、それは止めておこう。
分からないことがいっぱいで、でもそこをつっこんで聞いてはいけないような
まがまがしいような恐ろしいような、なんとも言えない気分になった。
***
ところで私が通っていた小学校は、
ひとつの問題に対し、統計資料などを基に結論を導き出す
という授業を熱心にやっていた。
その授業方法がそこそこ有名だったらしくて
全国からしょっちゅう視察団がやってきていたし
教育大の人が授業の様子を撮影したりもしていた。
自由研究などでも、必ず論拠となる資料を提示することが求められたし
分からないけどなんとなく~、みたいなのは駄目
ちゃんとその理由を説明するようにと常に言われていた。
理論的思考を重視している学校なのに、教員が授業中に
こんな訳のわからない話を真剣にするというのもどうかとは思うけど
こういう相反するものが何の疑問も矛盾もなく混在しているって
昭和の学校、今から考えると結構カオスだな。
このお父さんの様子も、子供の様子も
科学的に説明しようと思えば、簡単に説明はつくと思う。
でもそれを説明してもらったところで、なーんも面白くないのよ。
それよりも、今でもこの話を思い出すたびに浮かんでくる
暗闇の中にぼんやりと浮かぶ提灯の灯りと
真っ暗な山道を、何かを背負ってひとり歩くお父さんの姿。
夢か現実か分からないような、その絵の方が
私にとってはずっとずっと大事なのね。
これも、私の記憶の中の風景のひとつ。
2017年7月10日月曜日
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