2018年10月30日火曜日

Tradosが苦手

新しい職場に通い始めてほぼ二週間経ちました。
時給は前より安くなったし短期だけど、電車が乗り換えなしで30分という近さ。
本当に身体が楽だ。朝も8時に出れば十分間に合うし、駅から職場も歩いてすぐ。
前のとこは一時間半かかっていたから、きつかった。
通勤時間ってかなりストレスになるよね。

本当は3ヶ月くらいたらたら寝ていたかったのだけど
時給が安くなっても今の職場に行こうと思ったのは、そこが翻訳会社だったから。
いままでは、ずっとオンサイトの翻訳者として開発現場を点々としていたのだけど
翻訳会社が文章のどこをチェックして、何を基準に校正しているのか
知りたかったことと、何と言っても翻訳支援ソフトTradosが使えることが大きいわ。

Tradosは個人では導入していなけど、何か所かの職場で使ったことはある。
はっきりいって苦手。確かに、Officeのドキュメントならそのまま読み込んでくれて
またもとのフォーマットに戻してくれるから、レイアウトに時間が取られないのだけど
どうも、翻訳メモリという過去の訳文を保存して、マッチさせてくれる機能が苦手なの。
メモリに保存している過去の文章と同じものや似たものなら
マッチングの割合とともに引っ張ってきてくれるから、
効率は上がるし、表現や文型、用語を統一できるというメリットがある。
でも、保存された文章が正しいかどうかにかかわらず、
そのまま引っ張ってくるんだよね。

英語はネイティブチェックが入るから正しい文章になっているのだけど
英語は正しくても、日本語の文章の意味を取り間違えて訳し、
それがチェック済み文章としてメモリに保存されてしまうと
それ以降、別のドキュメントで同じような文章が出て来たら
自動的にその間違った文が引き当てられるのね。
100パーセントマッチの表示が出ていたら、訳をしなくてもいいと思っちゃうよね。
でもこういう文章を見つけてしまうと、たとえ完全一致していても信用できないから
必ず確認が必要になる。短い文書ならいいけど、数百ページの長い文書なら大変。

以前の職場で、過去の仕様書の訳がメモリに登録されていた。
製品というのは、あるモデルを元にして新モデルを開発することが多いから
仕様書もその過去モデルの仕様書を修正したり、追記したりする。
そのため同じ文章が何か所も出てきて、当然Tradosはメモリから訳文を
完全一致の文章として引いてくる。

ところが、よくよく読んでみると間違えてる。
やっぱり英語は正しいけど、日本語の意味を取り間違えていて
出来る機能が出来ないと訳されていた。
まずいことに、間違えている大元は5年前に社員の方が訳した仕様書で、
これをもとに作られた他の仕様書の訳文が、全部間違えていることになる。
その数どれくらいあるか、想像しただけで頭がクラクラした。
さらにまずいことに、どの仕様書もレビュー済みで事業部長の承認印が押されてる。
なんのためのレビューなんだよー、読んでないのかよー!と嘆いてみても始まらない。

今訳している文章は正しく訳して、メモリを修正すればいいけど
すでに発行済の過去文書はどうするよ?どうする、どうする?
翻訳チームのメンバーで頭付き合わせて相談した結果、
もう承認されているものは放置しようと決めました。
現実問題として、今抱えている仕事だけで一杯一杯で
自分たちが預かり知らぬ過去文書のことまで面倒見きれない。
それに正直言って、社員さんが訳して偉い人が承認したものの間違いを
臨時雇いの人間が指摘するって、メンツを傷つけることにもなるし結構しんどいのよね。
レビュー済み、承認済みで、誰も問題にしなかったんだからもういいじゃ~ん。

とーこーろーがー、それに反対する几帳面な人がいたのよね。
間違いが分かった以上は、そのまま放置していてはいけない。
出来る限り修正するべきだ、と言い出した人が。
それは正しい、普通ならその通り。気付いたら修正するのが誠意ある仕事よね。
そういうきちんとした人がいてくれるのは、普段ならすごく助かる。
助かるけど、今は止めて!その几帳面ぶり発揮するの止めて!
私は修正に割く余力なんてないからっ!
その時は通訳もやってて神経使ってたし、残業も多くて
これ以上仕事が増えたら、全員枕を並べて討ち死にできる状態だったわ。

直す直さないで揉めた結果、管理者である社員さんが
チームメンバーの残業が増えたら予算オーバーだから
見なかったことにしよう、と決定。
ああ、あの間違った仕様書群は今どうなっているんだろう。
私は知らない。知りたくもない。

メモリを共有することで、ひとつの文書内だけでなく
会社全体として文体や用語を統一できるけど
共有にはミスが全員に波及するというデメリットもあるわけで。
今の会社でも、さっそく一件同じようなのを発見してしまったわ。
これも、英語はネイティブチェック済みで正しいのだけど
日本語の意味の取り間違いで、英語と日本語で意味が逆になっていた。

ネイティブチェックは英語のネイティブスピーカーがやるので
英語の間違いは修正してくれるけど、そのチェッカーの日本語能力がどの程度か
というのは未知数のところがあるのね。
とくに、技術者が書いた文章は日本人が読んでもよく分からないことが多いし。

在宅やっていた時に、クライアントさんのチェッカーさんから
ネイティブのチェックは入りますけど、英語の間違いはチェックしても
その英文が日本語の意味を正しく捉えているかまではチェックしませんので
絶対に日本語の意味を取り間違えないでください、と注意されたことがある。

今の会社が依頼しているチェッカーさんは、かなり日本語能力が高い人で
日本語の意味が取れない場合は、「よく分かりません」というコメントを付けてくれる。
でも、その人が忙しいときに依頼する別の人は、どうやら日本語が怪しいみたい。
修正してきた英文を読むと、ああ、日本語の「てにをは」が苦手なんだな、
と感じるところが何か所もある。はっきり言っちゃえば日本語が読めてないの。

そもそも、日本人翻訳者が最初に読み違いをしなければいいわけで
例えばここに定冠詞が入るかどうかという細かい文法よりも、
技術者が大急ぎで書いた、主語がすっ飛んでて、そのすっ飛んだ主語が
一文の中で何度も変わるという複雑怪奇な文章の意味を
きちんと読み取ることの方が何倍も大事だと思うの。
両方完璧ならそれが一番いいのはもちろんだけど。

結局、どんな便利なソフトでも最後は人間の目で確認しないといけないのね。
めんどくさー。しかもTrados高い。自分では買えない。
家では秀丸でマクロ走らせて、Tradosは会社で練習する。
そのために今のところで働く。自分でもセコイと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿

また放置、そしていつのまにか春

 歳月が流れるのは早いなあ。 ぼーっとしている間に一年が終わり、年が明けたと思ったらもう2月も終わり。 父が手術で入院したりとバタバタしていたので2月半ばまで実家でリモートワークした。 いやー、仕事になりませんわ。 18時まで仕事なのに、5時過ぎから母に「ごはん作るの手伝え...